liberty 2
    New Album "COMFORT 2" 2023/4/30 release


M3-2021秋 終了報告

10月31日(日)M3-2021秋即売会におきまして、新譜シングル『Sonatina della luna che corre nel cielo』(空駆ける月のソナティナ)を発表しました。ご来場くださった皆さま、CD通販にてお手に取ってくださった皆さま。ありがとうございました!

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CD通販はバター工房オンラインショップで取り扱っています。

各曲コメント

1. 空駆ける月のソナティナ
2. Chamber Rock

春の新作アルバム『LIBERTY 2』では高い自由度のもと作品を完成させました。そこで、秋はよりコンセプトを絞った新曲を書くべく構想を練っていたのですが、最初からクラシカルな楽曲を書くイメージがあったわけではなく。何曲か書いたスケッチのなかでたまたま像の明瞭だったこの曲を取り上げたのですが、どちらかというとビートのはっきりしたピアノ・インストとして生まれてきた楽曲なのです。

M3即売会当日の夜に行ったピアノ配信で作曲者自らこの曲を弾きましたが、新譜のスタイル(Moeko Kamedaさんの演奏)とは全く違うビートと即興の伴う楽曲として奏され、リスナーはもちろん自分でも少し驚いてしまいました。図らずも、クラシック・スタイルの楽曲として制作しそれに合わせた奏者に演奏をお願いしたプロダクションの正しさが浮き彫りになったともいえます。

クラシック・スタイルに書き直したこの曲は、気軽に聴ける愛らしいサウンドのなかにフランス音楽の要素が漂い、浮遊感・幻想感のある小さなソナタアレグロ形式となりました。その音楽性からジャケット・ビジュアルのイメージが先行し、その後で「空駆ける月のソナティナ」の標題が付きました。

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ソナタ形式として楽曲を説明するなら、ホ長調で軽やかな序奏を開始し、一音一音にささやかな装飾音を伴う第一主題に移行します。risolutoの第二主題は少々破格ですがニ長調で提示。この部分はクラシック・スタイルに書き直す前のビート感の名残があり、親しみやすい曲調になっています。4小節の短い展開部を経て直ちに再現部へ、主調で第二主題を奏した後に序奏の主題に基づくコーダを歌って曲を閉じます。

どうしてクラシックに舵を切ったのか今もって明瞭には思い出せないのですが、感性で曲を書く傾向の強い私にとって『ヴァイオリンとピアノのための"Expectation"』以来明確にクラシックと銘打った作品がありませんでしたので、ここいらでストイックな譜面を起こしたいという気持ちが無意識に働いたのかもしれません。ソナタ形式に関していえば、Sonata Positivo以来13年ぶりということになります。楽曲の規模は全く異なりますし、今回は小さなプロダクションではありますが、クラシックの様式美エキスをギュッと絞ったような曲を書けたかと思います。


かたやChamber Rockはクラシックとは少々方向性の異なるピアノ・ソロ楽曲です。元々は室内楽のコンパクトな音色編成が持つ端正な響きに、ロックのアクセント・ビートを加えた玲瓏な音楽が作れないかという思いから作った曲。

バンド演奏用のコード譜しかありませんでしたので、今回のプロダクションに合わせて譜面をクラシック・スタイルに書き直し、標題曲と同じくMoeko Kamedaさんに演奏をお願いしました。難曲ですが過去に演奏会で同曲を披露してくださった経験がおありですので、短時間でアグレッシヴな曲想を取り戻してくださりました。中間部に突如現れるTempo di Valseなどは、まさしく今回の新譜のスタイルによる旨味が感じられる部分かと思います。

今後に向けて

いろいろなことが頭に浮かびます。クラシックの流れを汲むと楽譜集のようなものを(これ自体はずっと構想にはありますが)やはり作りたいと思いますし、一方でクラシックを経たからこその刺激的なインストおよびそのライブ・配信なども。2022年に向けて、また面白いものをお届けできるように準備を進めたいですね。