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    New Album "COMFORT 2" 2023/4/30 release


帯広豚丼紀行2022

 こんなカテゴリあったのか、と思わず古い記事を読み進めてしまった。院生になりたての頃の自分は行動力に溢れていてびっくりした。否。まだ学生相互間のコミュニティが緊密で、行動を起こさなくても声がかかるような状況下だったことも大きいだろう。

 本題。私は帯広の豚丼という郷土料理が好きなのだが、先般帯広を訪れることとなった知人の「どこがお勧めですか?」という問いに応えられなかった。現地を訪れたのは親に連れられて行った2回(幼少期と、もう1回はいつか忘れた)だから、札幌民でも食べやすい「いっぴん」「ドライブインいとう」くらいしか味の記憶が無い。

「ぱんちょう」が王道じゃないですか?

に留まった。そんな折、夏季休暇に併せて帯広を訪れることを決めていた。秋の新曲制作のためのワーケーションと、古い友人に会うためである。後者は情勢不安により見送ったが、せっかくの帯広滞在を有効に使う一環として、可能な限り豚丼店を巡ることにしてみた。

 なお、滞在先のホテルの朝食ビュッフェでは炊きたての米飯の横に「豚丼」と書かれたホットケースがあり、タレに付け焼きされた豚ロース肉が鎮座ましましていた。ご丁寧に山椒もセットされており、こうなると段々飽きてこようとも毎朝小さな豚丼を拵えざるを得ない。都合、朝食を入れれば9食連続で豚丼を食べたことになる。

 否。豚丼店巡りの話である。

❶ぱんちょう

 先述の幼少期の記憶の中で、昔ながらの豚丼屋に入った覚えがある。店内は炭火で焼いた豚肉の香ばしい煙に満たされ、いかにも人気店といった混み具合で相席しながら慌ただしく食べた。グリンピースが乗っていた覚えもある。

 それがぱんちょうであったかどうかは判然としないのだが、今回入ったぱんちょうはモダンな店内で煙も立ち込めず、あのときのような強烈な印象は得られなかった。設備が現代化し、煙のセパレートが完璧になりすぎたのかもしれない。清潔な店内で食べられるのはもちろん良いことだが、炭火で焼く絵を見ることは叶わず。厚切りの豚肉は食べ応えがあって至極良いのだけど、もっと強烈なインパクトが豚丼には無くてはならないような気がしたが、後から振り返ると思い出補正分のギャップというだけかもしれない。

 味噌汁は別。なめこかわかめが選べる。

❷ぶたはげ

 駅ビル(というほど大きくない)構内にあるお店だが、ちゃんと炭火の香りがする。肉はぱんちょうに比べると薄めのカットだが、よく味が染みており美味しい。ご飯がやや多めのバランスで、個人的にはもう一枚肉がほしい。駅で気軽に本格派が食べられるのは良い。

❸ぶた八

 当初の予定には無かったが滞在先に近かったこともあり来訪。店内に炭火の香ばしさは感じない。肉は厚めと薄めが選べる。グリンピースが串に乗っている珍しいスタイル。網目のついた肉はちゃんと香ばしい。想像より小ぶりの量に感じたが、食べてみると肉量の満足感は高め。薄肉の「三朗」を食べたが厚肉の「二朗」はご飯の量も上がるようだ。味噌汁は別で、今回は注文せず。

 なお、帯広駅構内で売っている豚丼弁当はこのお店が作っているようだ。仙台の牛タン弁当のように、紐をひいて温めるタイプらしい。

豚丼一番 ぶたいち

 帯広駅からそれなりに遠い。400mベンチで有名な緑ヶ丘公園に立ち寄りつつ、駅から公園までの距離をもう1セット弱ほど歩いて訪問。レンタサイクルやバスも検討したが、たるみ気味なので歩きにした。気温がそこまで高くなかったため、思ったよりは疲れずに行けた。

 入店。煙の香りが香ばしく、かといって店内は煙たくなく、よくセパレートされている。この時点で昔の記憶は昔の話であり、今はどの店も食べるスペースを綺麗に保つのがスタンダードなのだろうと思った。

 食券制。ミックス豚丼つまりロースとバラのミックスにしたが、今までで1番ジューシーで、どちらの肉も柔らかくとても美味しかった。ただ、脂分で(肉の面積的に脂が多かったわけではない)最後のほうは少々胃もたれした。初めて沢庵がないときついと感じた。ただ並盛でありながらお肉の量が大変多く、満足感が高かったことの裏返しでもある。20代だったら、このお店のバラ肉が一番美味しく感じたであろう。

 次に訪れる機会があればロース豚丼か、ミックスと同額で食べられるヒレ豚丼にしてみたい。なお、池袋にも店舗があるらしい。

❺はなとかち

 当初気づかなかったが、ここも帯広駅に近い。店は小さめ。ここもバラ肉を半分ミックスした「半ばら豚丼」が売りのようだ。特徴は山わさびと枝豆。山わさびは結構しっかり乗っており、一回しこたま鼻に来て悶絶したが、他店にはない薬味の楽しみは悪くない。肉もご飯も美味しく、バランスも良い(だんだんコメントが雑になってないか?)。吸物椀で供される味噌汁もオツ。

 カウンター席にはQRコードがあり、「注文ってこれでするんですか?」「ハイ」の声に従い、不思議に思いながらスマホで注文したが、あとのお客さんの様子を見るに普通に店員さんに注文を取ってもらってよかったようだ。従業員は3名いるものの結構忙しなくやや淡白な接客は気になったが、これもあえて言えばという程度。全般的にはハイレベルだった。グリンピースに替えて枝豆を入れるのはありそうで無かったというか、上手いなと思った。こちらのが万人受けしそう。

❻とん田(た)

 こちらも帯広駅からは少し遠く、車での来店が普通だろう。開店5分後に入ったが今までで一番の行列で、持ち帰りの車列もインターチェンジ?まで伸びていたとか。2台のテレビから甲子園が流れる店内の待合スペースで40分ほど待った。店内は広々余裕のある感じ、カウンターも二人掛けスペースに一人客を入れており、コロナ前ならもう少し回転が早かったのかも。

 ロース豚丼を注文。ぶたいちに似ているがあちらほど脂っこくなく、ロース肉はしっかり柔らかく、味付けも良いし肉量もたっぷり満足で、値段が他店に比べると気持ち安めなのが信じられないくらい。正直もう豚丼に飽きつつあるなかで「ああ、美味しい」と思わせてくれたことからも、今回の旅ではここが一位といって良いかもしれない。次はヒレ豚丼も注文してみたい。

 なんでもいいからケチをつけろと言われれば、添えてある山椒がメーカー品だったので、これだけ美味しい豚丼を出すならそこももう少しこだわってくれたらとか。店内のテレビでNHKのニュースが流れてるのは情緒に欠けるなあとか。美味しい豚丼を食べられればどうでもよいことである。

ドライブインいとう(番外)

 これは帯広旅ではなく、新千歳空港にて。今回初めて調べたが本店は十勝清水町にあり、帯広からは車で約40分である。並990円、味噌汁と沢庵、きゅうりの漬物付。帯広の各店を巡った後だと、沢庵以外の漬物が珍しく感じた。

 量は帯広の各店に比べるとやや控えめだが、空港価格を考えればまあ妥当か。肉は小さめに切り分けられているがちゃんと厚みがあり、枚数も不満足感は無い。山椒と生姜パウダーが用意されている。温玉や二段重ねなど、メニューのヴァリエーションも多い。

 ガラス張りの厨房を見るにガス、フライパンで調理されており、あれ、前は炭火じゃなかったっけ?と父と顔を見合わせた(間違っていたらすみません)。そうでなくともタレが美味しいので、全然美味しく食べられてしまうのだけど。

❽十勝豚丼 いっぴん(番外)

 これは今年ですらなく、過去の記録だが参考として。札幌に何店かあるので個人的に馴染み深いお店だが、帯広の本店はかなり西の方にあるため、今回の滞在では訪れず。白髪ネギが特徴。豚丼そのものも安定の美味しさだが、写真で見切れているサラダにかかっているコーンドレッシングがとても美味しい。

  * * *

 以上終わり。私はとん田が特に好きでしたが、ぱんちょうも思い出補正のギャップ無しに食べればもっと美味しく感ぜられたのではないかな、と思いました。あと、炭火!煙!網目!と肩肘張ったけど、必ずしもそういう昔ながらのお店ばかりではなく、そうでないお店にも美味しいところが沢山あると知れたように思います。

 帯広豚丼が食べたくなった方はスーパーで「ソラチ 十勝豚丼のたれ」を探しましょう。都民の皆さまは池袋でぶたいちに行ってみるのも良いかもしれません。