M3-2019春終了しました。拙作を手に取ってくださった皆さま、差し入れをしてくださった皆さま。ありがとうございました!
新譜シングル『80』を発表させていただきました。最近の販売実績とWebインプレッションを鑑み減産しましたが、比較的早い時間に完売御礼となりました。
私の音楽を気にかけてくださっている方々はWeb上だけに存在するのではないということに改めて気付かされました。本当にありがたいですし、継続して次に期待していただくために、身の引き締まる思いです。
各曲について
- 80
久しぶりに、スローテンポのシングルです。タイトルの80はBPMのほか、80年代ポップス的な幾分懐かしさを感じる音作りをしていること、などに由来します。
スローな曲をシングルにすると「Lost Hope」のように大曲になってしまいがちなのですが、今回は日常的な、さりげない楽曲、聞きやすい音楽であることを念頭に置いて書きました。もちろん、前回のアルバム「missing」がアグレッシブな音楽であったことの対比もあるのですが、それだけでなく…目立つ曲を、映える曲を…という自意識に、今回はブレーキをかけたかったのです。走るだけでなく歩くことの重要性。アップテンポの曲だけでライブを組まない自制心。100%だけでやろうとしない、要所で80%で動く老獪さ。
結果として、スローだけど明るくて、音を詰め込みすぎず程よい隙間のある、ありそうでなかったピアノ・バラードに仕上がりました。シンセ・ブラスなど、格好つけてばかりいたらまず使わない音色を思い切って入れたこともポイントです。生録音の美しい音はピアノとスレイベルでじゅうぶん。控えめでヒーリングの性格もありながら、一方でポップに仕上がったと思います。
- 回路
「回路」
— VUTTER@3/1新譜発売 (@VUTTER) 2019年4月21日
無機的でミニマルなピアノ・ソロ。打ち込みピアノらしく多少の生演奏度外視性を含んでいますが、概ね演奏可能と言ってよいかと思います。
「80」制作中に急に降りてきて頭の中に居座ったので、すぐさま書き下して脳内から逃がしました。https://t.co/R0o9YZp4Oj
打ち込みピアノはアルバム「PARALLEL」以来の登場ですが、ピアノソロで使うのは初めてかもしれません。無機的、機械的な雰囲気が際立って面白いのですが、一方でクラシカルなピアノ小品として切り取っても成立するので、アルバムで生録音するかどうか悩むところです。
- 風の在る処
「風の在る処」
— VUTTER@3/1新譜発売 (@VUTTER) 2019年4月21日
一転して民族音楽風の打ち込み楽曲。原型はかなり古く、正確な記録を辿ると高2(!)のときに途中まで書いたきりになっていた曲でした。
音源を新しいものに差し替えることはせず、当時の音色をそのまま使い、サビだけを新たに追記して仕上げました。https://t.co/YawnkXchjn
そういった「書きかけ」の曲を貯めてあるフォルダの中でもいつか形にしたいと思っていた筆頭だったのですが、まさかここまで時間が経っていたとは思わず。
— VUTTER@3/1新譜発売 (@VUTTER) 2019年4月21日
16歳のときの楽曲ということで、19歳のときに書いた「夢から覚めて」を凌駕する最年少楽曲ということになります。「書きかけ」フォルダをたまに確かめるといつも耳にしていた曲なので、今回掘り起こして思いのほか古い曲だったことに驚きました。パーカッションなどかなりチープな音ですが、この曲に関してはそのまま活かすのが正しいでしょう。
今回のシングルのB面は、元は1月のライブ版あたりを入れようかと思っていたのですが、直前になってやはり皆さまの聞いたことのない楽曲を届けたい、と思い直しました。その過程で「回路」とこの曲の2つが並行してプロダクションされ、結果的に両採用に。3曲入ったことで、今まで作ったシングルの中では最も尺が長くなりました。
ビジュアルについて
今回は「80」ということで、当初は「80」の目盛りのついたカップやメスシリンダー辺りを使おうかと思っていたのですが、資材を買いに出た吉祥寺で思うようなものが見つからず。どうしたものかと街を歩いていたら、この美濃焼のカップが目に入りました。最初はジャケットに使おうとは思わなかったのですが、何気なく購入し、何気なくコーヒーを淹れ、何気なく写真に収めたら、いつしかこのスローな楽曲シングルのビジュアルとして根付いておりました。
ちょっとコーヒーでも飲んで落ち着こうよ、という意味では、案外間違った絵でもないのかもしれません。
おわりに
昨秋のアルバム「missing」で自身のピアノ・インストゥルメンタルはある程度やり切りましたので、今回どういうサウンドを発信するかはかなり悩みどころでした。真面目な話、一回休んでみようかとも思ったのですが、気がつけばM3に申し込んでいたのは、やはり何らか創出したかったのでしょう。それこそ、missingの流れを継いだピアノ・インストを続ける手もあったのですが、結果的にはこのスローな作品となりました。この作品なりの新しさはあると思いますが、私一人のサウンドのなかで突き詰めた、ある意味では後ろ向きの新しさです。
次はまた、前向きの新しさを追求したいと思います。