Switchにて2020年8月に発売されたFINAL FANTASY CRYSTAL CHRONICLES Remastered Editionをクリアしました。原作は未プレイでサウンドトラックだけ浴びるように聴いて過ごしてきた身として、クリア後に改めて各曲に対して感じたことを雑記として残してみようと思います。
自然とゲームの中身に触れることになりますので、未プレイでネタバレを気にされる方はご注意ください。
大前提として
2003年発売のゲームキューブソフト「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」の演奏をロバハウスが担当しました。クルムホルンレコードのコーナーでも販売していて既にお馴染ですが、分類としてはこちらにも載せるべきと思いました。歌のYaeさん、テーマにゲストミュージシャンを迎えている以外はすべてロバのサウンドです。
この作品が第7回「文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門で大賞に輝きました。審査委員会は「画像・音楽とともに一級の仕上がり」と評価したそうです。(ロバハウスWebサイト内"Guest CD"より引用)
大前提として、FFCCのサウンドは中世・ルネサンス時代の古楽器を演奏される楽団であるロバハウスが音楽の大部分を演奏していることに触れなくてはなりません。メインコンポーザー・谷岡久美さんの書く温かなメロディーと大変よくマッチしています。その温かく上質で、悠久の時間が流れているかのような音は、音楽が映像を引っ張っていかなくてはならない時代をとうに過ぎているにもかかわらず、このゲームの世界観の大半を決定づけているといって差し支えないでしょう。
これは音楽が背景に徹する映画的な演出が通常となった90年代中盤以降のゲーム音楽演出を鑑みれば、かなり珍しい部類に入ると思われ、かつその試みはこのゲームに良く合致している。すなわち、いわゆる世界を旅するRPGでありながら一年に一回は生まれ故郷に帰り、祭りの舞に加わる…という独特のタイムラインを備えている作品にあって、古楽器の温かみ、落ち着いた世界観、土や風といった自然にまで思いを馳せることのできる空気感。すべてのマッチングが理想的とは過言だとしても、それに近い領域まで到達せんとしていることは、一つの成功例としてもう少し日の目を浴びても良いのではないかと思うのです。
何度も話題に出している気がするけど、FFCCのサントラを大学のピアノサークルで開演前BGMで流したら終演後ドイツからの留学生が「開演前の曲がすごく良かった」って言ってたのですよね。あれで我々は学んだんです、メインを食う選曲をしてはいけないと(また逸れてる)
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年9月13日
まあ一例に過ぎないわけですが世界に通用する音楽なんだなと思うと同時に、不思議にも感じた覚えが。ヨーロッパ古楽が我々にとっての邦楽のようなものだとしたら、それをあえて流されてあそこまで感銘を受けるだろうか?と。でも彼にとっては新鮮だったのだろうな
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年9月13日
ゲーム性と音楽的効果の相反
さて、実際にプレイして感じたゲーム性は、なかなかに取っ付きにくいところがありました。フィールド上の敵オブジェクトとリアルタイムで戦うアクションRPGではありますが、
・倒すと手に入る魔法をコマンドに装備することで使うこと
・手に入れた魔法はダンジョンを終えるごとにリセットされること
・手に入るアイテムや「レシピ」が何に使うものであるかが分かりにくいこと
…等々、説明不足のところが多い。ダンジョンで手に入るアーティファクト(攻撃+1、防御+1、魔法+1、コマンドスロット+1、…etc.)は一時的にステータスを強化してくれるが、ボスを倒してダンジョンを出るときに一つだけ選択したものだけが恒久的に残る(他はリセットされる)仕組みなどは、いくつかダンジョンをこなしていく内にようやく分かりました。ダンジョン内ではお付きのモーグリの持つクリスタルケージの効力が及ぶ範囲にいないと瘴気でダメージを受け、そのモーグリは持つのが疲れたと定期的に文句のセリフを言う始末。メニュー画面のインターフェイスも良質とはいえず、別のタブに移行するにもいったんキャンセルボタンを押さなくてはいけないとか、不自然な挙動が多い。加えて後半は謎解きも一見して分かりにくいものが増え、最後の方は攻略サイトに頼らなくては難しいところでした。
決定的なのは、ワールドとワールドの間にある「瘴気ストリーム」の属性が自身のクリスタルケージの属性を合わないと通行できないこと。数あるダンジョンごとに属性が定められているので合致すれば少しの手間で通れるものの、ゲームを進めるうちにCからDへ行くためにAに戻る、みたいな作業が求められることもザラ。かつ、一年が終わると(ダンジョンをいくつかこなすと一年経つ)瘴気ストリームの属性は変わってしまう上、故郷の村に強制的に戻るため進めていた地点に戻るのも一苦労というのを延々と繰り返さなくてはなりません。終盤では属性を気にせずに進められるようになりますが、かなりストレスを感じたのも事実です。
FFCCは瘴気ストリームに阻まれたときに下がるモチベーションにより進捗落ちてる笑
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年9月14日
ゲーム性を抜きにすると、心の温まるようなシーンに出会うことが多いのは魅力的でした。ダンジョンを一つ攻略する度に家族から手紙が届き、アイテムをつけて返信する。街道ではイベントにエンカウントし、他のキャラバンから情報やアイテムを得たりできる。一年が終わると必ず故郷に帰省し、日記を振り返り、年に一度のお祭り。翌朝、また家族に見送られて出立…等々。この辺りの温かな描写は、正にロバハウスの音楽との相性がぴったりでしたが、快適なゲーム性という観点ではしかし、すべて相反してしまうのです。今挙げた要素をすべて短所と捉えている人は少なくないと思われます。ここが喧嘩しないようなゲーム性が備わっていたら、きっとこのゲームはもっと人気が出ていたのでしょう。
さて、前置きが長くなりましたが、改めて一曲ずつ触れていこうと思います。なお、本編未収録の星月夜アレンジ版と、リマスターで追加された楽曲には触れないことにします。
ディスク 1
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01. 記憶のこだま
タイトル画面で流れる短いループ。ゲーム終盤にリフレインする場面がある。
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02. カゼノネ
言わずと知れたオープニング・テーマ。歌はYaeさん。FFCCの世界観をよく現している。サビ前のハープからは、これはFFなのですよという暗示的主張を感じる。
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03. やすらぎ
ダンジョンクリア後のリザルト画面。アーティファクトの選択に悩むと延々と聞くことになる。
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04. 今日が来て、明日になって
「今日が来て、明日になって」がフィールドBGM的に使われてるけど、平和すぎて冒険感があまりしない。最初の村がこの曲で、旅立ちがフィールド曲なら良かったのに(旅立ちが聞きたいだけ)
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年9月8日
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05. はじまりの村
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06. キャラバン・クロスロード
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07. 旅立ち
旅立ちは良い #FFCC #NintendoSwitch pic.twitter.com/UnURZ1Lamj
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年10月17日
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08. 川面にうつる雲
ジェゴン川で流れる曲。あるマップとあるマップを隔てている川であり、何回か通ることになるので割と聞く機会は多い。進行が詰まってイライラする気持ちを鎮めてくれる(笑)。
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09. 夢路の夕暮れ
夢路の夕暮れ最高
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年8月30日
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10. 鎚音ひびく峠にて
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11. 憂いの闇の中で
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12. にぎわいと伝統と
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13. おののけ、もののけ
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14. 三人いれば…?
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15. 誓いは永遠に
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16. 閉じられた物語
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17. マギーがすべて
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18. アミダッティも、エレオノールも
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19. 約束のうるおい
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20. そよかぜ吹けば
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21. 風のこえ、時のうた
「風のこえ、時のうた」の後半部、前後と脈絡のない厳かなパートが突然挿入されるのだけど、何をイメージされてこの部分を書かれたのか。谷岡さんにお聞きしてみたい
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年9月8日
こういう不思議な部分のある音楽にはつい惹かれてしまうではないですか
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年9月8日
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22. 魔物の砦
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23. 覚悟を決めろ
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24. 怪物の輪舞 ~ロンド~
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25. 命の水
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26. ぼくモーグリ
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27. なつかしい横顔
年が終わったときの「なつかしい横顔」のイントロの楽器とか、うっかり見落としてしまうくらいの深み。サントラのライナーノーツ読み直してみると「フルヤ」という笛か。こんな音楽でプレイできるの、幸せなことだと思いますよ
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年9月13日
年の終わり毎に聞ける「なつかしい横顔」が良い。気持ち胸が熱くなるのは正に帰省の面持ちよな #FFCC #NintendoSwitch pic.twitter.com/287Rbe7rnT
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年10月16日
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28. 年に一度のお祭り
ディスク 2
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1. はてしなき空
→FFWikiによるとタイトルループ、とある。
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2. ただ突き進むのみ
瘴気ストリームの曲。多くのプレーヤーのイライラの種(笑)。
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3. ぼくのおうち
モーグリの家の曲。
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4. 大海原をながめて
街の曲(ティパの港)。序盤に聞く印象が強いのでこの位置にあるとどこで流れるか一瞬悩んだ。
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5. 心の奥に燃ゆるもの
ダンジョン曲(キランダ火山)。行くまでが結構大変。
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6. 「自由」に身をゆだねて
街の曲(ルダの村)。7拍子の速いテンポの街曲というのも珍しい。
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7. 砂に眠る秘宝
ダンジョン曲(ライナリー砂漠)。これも変拍子。ライナリー島は変拍子で行くと谷岡さんが決めたのかもしれない。大きな謎解きのあるダンジョンなので、この曲は浴びるほど聞くことになる。こういうときに癖のある曲だと耳が疲れることが多いのだけど、不思議とそこまで神経質にならずに聞き続けることができた。
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8. 光よ…!
特定のイベントで流れる曲。この辺りからRPGの終盤らしくシリアス度が高まってくる。
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9. 新天地を目指して
ダンジョン曲(コナル・クルハ湿原)。題名からして中盤で流れるフィールド曲かな?程度に思っていたので、このゲームでも随一の長く難度の高いダンジョンで流れるとはつゆ思わず。ロクに準備せずに行ったら(曲が平和なので何だか大丈夫そうな気がした)(曲のせいにするな)ボスで詰んだ。
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10. 哀しみを強さに
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11. 笑顔いっぱいの時間
この2つはFFWikiによると「王女失踪イベント」とある。確かアルフィタリア城のイベントだったと思うが私は未経験でした。
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12. 北の空が澄んでいたころ
ダンジョン曲(レベナ・テ・ラ)。終盤のイベントとか、ラストダンジョンでもおかしくない曲調かと思っていた。ラストではないけど、終盤のダンジョンの曲。順当に難関。
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13. マグ・メル
聞いていて不安で頭がおかしくなる、あまり聞きたくない部類の楽曲。作曲家としてはこういう曲を作るときって一定の楽しさがあるのだけどね。一応、街の曲に分類されるだろうか。
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14. アクロス・ザ・ディバイド
ダンジョン曲(ヴェレンジェ山)。これこそラストダンジョン一個前のダンジョンとかだろうか、と思っていたけど、実際はラストダンジョンそのものであった。とにかく敵が強く仕掛けも難解で苦労した覚えしかないが、後半の少し光の差すかのような部分が救い。これも星月夜のモチーフかな。
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15. 心の中に響く音
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16. 光と影
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17. 忘れたくない…
これらはラスボス前のイベントの曲で、「心の中に響く音」は「記憶のこだま」のリフレイン。ラストダンジョンが大変すぎて、ここまで来て全滅したら洒落にならないぞ、という気持ちだったのであまり落ち着いて聞けた覚えはない。
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18. 哀しい怪物
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19. 融合、降臨
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20. クリスタルを継ぐ者へ
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21. どこまでも蒼く
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22. 星月夜
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23. 水のオルゴール
これはエンディングの一連の楽曲で、「星月夜」がエンディング・テーマでありスタッフロール。歌はOPと同じくYaeさん。「水のオルゴール」でThe Endといった流れ。
おわりに
星月夜の歌詞は、この記事で挙げたようなFFCCの温かみが凝縮されたような内容になっている。「家族の元へ今すぐ帰りたい 涙こらえた星月夜」といった歌詞…ある種の弱い心をRPGという土壌で最後に語ることには賛否あるかもしれないけど、個人的にはこういうお話があっても良いのではと思う。ゲーム性について親切でない点などについてはいくつか批判的に書いたけど、こういった温かみや「思い出」を鍵にしたゲームのコンセプト自体は悪くないと感じる。
万人向けではないかもしれないけど、やはり珠玉の音楽もあり、時代の流れとともに忘れられていくのは少し惜しいような気持ちにさせてくれるゲームだった。ヒットを狙えるようなゲームではないのでよくリメイクのGOが出たなとも思うけど、結果的に「ただ音楽が良い」という感想に終始するだけでなく、それを内包するゲームを体験した上での見地に到ることができた。その機会を与えていただいたことに感謝したい。そしてこれからは、もう少し有機的な気持ちでFFCCの音楽を嗜むことができそうだ。
クリスマスイブに #FFCC クリアしました。本当に大変だった・・・本当に #NintendoSwitch pic.twitter.com/TSDpIz6e0R
— VUTTER@1/16下北沢ライブ(配信チケットあり) (@VUTTER) 2020年12月24日