liberty 2
    New Album "COMFORT 2" 2023/4/30 release


M3-2024春 終了報告

4月28日(日)M3-2024春即売会におきまして、当ブース《バター工房》へお越しくださった皆さま、ありがとうございました。

新譜ミニアルバム『木の薫る町』を発表しました。

  1. 木の薫る町Ⅱ
  2. 風の草原
  3. 仄(ほの)暗き山道
  4. 浮遊する遺跡
  5. 雪の小村

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 原点回帰

 今回は、ピアノ・インストは「お休み」です
 バター工房初期の作風を思わせる幻想的・風景描写的な世界観をお楽しみください

私がピアノを一旦離れ、打ち込み楽曲の曲集を挟みたくなった経緯は昨年の総括で触れましたが、改めてゲーム音楽を思わせるファンタジーな曲集をこのタイミングで作ることになったフィーリングを別の切り口から書いてみます。

私の作る楽曲の特徴の一つに、「ドラマチック」であることが挙げられると思います。編成の大きな曲にしろ小さな曲にしろ、ピアノ・インストであれファンタジーであれ、喜怒哀楽いかなる感情の曲にせよ、つい、人生を賭けたような壮大な曲になってしまいがちなのです。

それは、グラフィックを音楽が引っ張っていかなければならなかったレトロゲーム(ここではPS初期くらいまでを含む)の音楽を、多感な青春時代に鱈腹吸い込んできた受容史によるところが大きいのかもしれません。前作のCOMFORT 2も休日に気軽に聞けるような曲集を目指したのですが、平和な雰囲気の曲や、音数の少ない曲であっても、やはりどこかシリアスさが残ってしまった。

今度こそ、もっと肩の力を抜いて。聞き疲れしない曲を。にぎやかな曲であっても、日常に干渉しない曲を。

そんなささやかな曲集に仕上がったかどうかは皆さまの感覚に委ねるしかないのですが、とにかく虚勢、壮大、カッコ付けが頭をもたげるたびに、いかにその感情を抜き去るかに腐心しました。

各曲解説

木の薫る町II

今回のプロダクションで一番最後に書いた曲。

ラフを書き上げた直後、自分好みの良曲になりそうな予感がしたので、先の制作コンセプトとも照らし、かなりの注意を払った。可能な限りスタンドプレイをしないように、また思い入れを込めないように。全体のバランスから突出しないように心がけた。

2015年の作品「木の薫る町」(elementscapes収録)の続編のつもりで書き始めたわけではなかったが、生まれてきた曲調からはこのタイトル以外に考えられなかった。

ある曲Aに似ているのが気になり、一度メロディーを変えている。が、友人からは別の曲Bに似ていると指摘され、際限が無いなと思った。

結果的にはアルバムタイトルとなった。

風の草原

松の内も明けない内、札幌滞在時に書いた曲。

せっかく銀世界にいるのだから雪の曲を書こうと思い立ったものの上手く像が結ばず、気づけば全く正反対のサバンナ風楽曲となっていた。

アルバムのなかで最もテンポが早いので、3ループ収録した。最後のシロフォンの同音連打が気に入っている。

仮タイトルは「札幌ワーケーション」。

仄暗き山道

一番最初に書いた曲。

隣県ワーケーション中にサウナに入っていたとき気がづいたら頭の中で鳴っていた曲を夜通しかけて書き下した。

とにかくシンプルにすることを心がけた。音を足したくなっても、よほどのことが無い限り採用しなかった。

ダンジョン風の楽曲なので、数時間連続で聞くことになるような想定で、物足りないくらいにとどめることを強く意識した。スルメ曲を目指した。

結果的に、この曲集で最も音色の種類が多い曲となった。

仮タイトルがそのままタイトルになった。

浮遊する遺跡

生まれて初めてカフェにノートPC持ち込んで作曲した曲。

カフェで既に出来上がった曲の楽譜を浄書することはあったが、一から作曲することを試してみたくなった(カフェでないと作曲できない、と言っていた音大時代の友人の言は、自分には当てはまらないと思っていたが…)。

なかなか良い曲にならなかった。要所要所は良いがフレーズの移行部に違和感があったり、人為的になりすぎたり…の連続だったため、ある程度書き進めたところで思い切って曲を小分けに刻んだ後、クラシックでいうところのロンド形式風に再構築した。

カフェでの作曲時からは曲の展開が大幅に変わった。当初は変拍子すら入っていた。

ずいぶん遠回りになったけど、こういうアプローチでも曲ができるのだなと思った。全然だめだな、と思っていた曲が変身して別物になるまでのプロセスが面白かった。

仮タイトルには作曲したカフェの名前を付けていた。

雪の小村

札幌滞在の後少し経ってから東京で書いた曲。やはり雪の曲が書きたくなったらしい。

雪の曲を書くと原風景ノスタルジー的思い入れからドラマチックな曲になりがちなので、そうではなく穏やかな曲を意識した。

また、さりげなくありたかった。最後があっさり終わるのもその狙いから。繰り返し再生で1曲目に戻っても気づかないような感じがほしかった。

4拍子の曲が多いので違うものを書こうとしたはずだが、結局これも4拍子になった。

木、膜、砂、金属などの材質を頭に浮かべた時、それらをバランスよく配置するのが音色選びでは大事だが、この曲は金属が多くなった分、小規模ながら綺羅びやかな印象も受ける。

仮タイトルは「3曲目(雪)」。

販売と次作について

今回の作品はオンラインショップやダウンロード・ストリーミング配信はせず、イベント販売限定とさせてください。ごく僅かですが在庫がありますので、次回以降のイベントに持参しようと思います。

次にオリジナルチューンを打ち出す機会には、間違いなくピアノ・インストゥルメンタルに回帰し、若作りを厭わない音になることはほぼ確実と思われます。ただ、それがやたらめったら攻撃的な打突音が多かった時代に比べて、たとえばシンフォニックな要素が加わるのか、今作の流れを汲んだサウンドも加わるのか。まだまだ余白があるので、外向きのライブ発信なども交えながら考えていきたいと思います。