liberty 2
    New Album "COMFORT 2" 2023/4/30 release


2021年によく聴いた音楽

いつ以来かの音楽レビュー的記事。前はCDレビューの体裁だったり、ゲーム音楽であればプレイ後に音楽面を中心とした感想記事の形でまとめていましたが、最近はYouTubeサブスクリプション視聴の形も増えてきたのでひとまず2021年によく聴いた音楽、という形で雑多にまとめてみようと思います。

麒麟がくる(ジョン・グラム)

2020年の大河ドラマ。音楽はキングスグレイブFFXVの音楽も手掛けたジョン・グラム氏。

諸般の事情で放送終了は2021年2月まで食い込みました。このラストの本能寺の変に向かう辺りで一気に引き込まれ音楽受容もにわかに高まり、数百あるサウンドトラックの中から特に気に入ったものを単曲購入して作ったプレイリストがこちら。

  1. 麒麟がくる メインテーマ
  2. 光秀!
  3. 旅へ
  4. プロローグ
  5. 伏在
  6. 暗雲
  7. 時は今
  8. 喰うか喰われるか*
  9. 皇胤*
  10. 狂気*
  11. 人間五十年*
  12. 本能寺 II
  13. 揺るぎのないもの
  14. 大きな国
  15. 麒麟メドレー

*をつけた中盤の4曲は通好みで、ライト層に聞かせるときには割愛。個人的には「人間五十年」は外せないですが。重厚なコーラスと途中のチェロ・ソロが印象的で、本能寺前夜の張り詰めた空気を巧みに演出します。

一曲当記事でピックアップするなら、やはり単曲ヘビーローテーション行きの「揺るぎのないもの(Iron Willed Mitsuhide)」。英名は鋼の意志の光秀、というところでしょうか。序盤から要所で流れる楽曲ですが、信長の最期と光秀との回想のシーンでのインパクトはやはり強烈で、こういうところで使われる音楽はどうしても思い入れが濃くなってしまいます。ある種一時の流行に伴う嗜好ともいえるわけですが、そういう外的な力によって評価が上がることがその曲本来の持ち味ではないと言い切ることはできないと思っています。

なお、プレイリストに入れたかったけど見つけられなかった曲が2つあります。

一つは笛の下降メロディーで「D------Des-C-B-G」を繰り返す不穏なg mollの楽曲。

もう一つは、たとえば最終回で「光秀は敗れた。世の動きは一気に早まった」のナレーションが流れるときの明るめの行進曲。

おわかりになる方いらっしゃいましたら、教えていただけると嬉しいです。

FINAL FANTASY VII REMAKE Original Soundtrack(植松伸夫浜渦正志、鈴木光人ほか)

FF7リメイクのサウンドトラック。CD7枚組の大作は、第35回日本ゴールドディスク大賞においてサウンドトラック・アルバム・オブ・ザ・イヤー受賞という客観的な成果もあげています(過去の受賞作は〔君の名は。〕〔ボヘミアン・ラプソディー〕〔アナと雪の女王2〕など)。

FF7という大作ゲームのリメイクですから、私のような古参のファンは半端なものを出されようものなら批判を浴びせかねないところですが、この力の入れようは脱帽せざるを得ないというか、このボリュームを全力疾走のまま駆け抜けるほどのテンションで打ち出されてしまうと、多少の傷も気にならない清々しさがあります。スクウェア・エニックスの固定メンバーだけでなく外の血が程よく混ぜられているのも散漫になりすぎずディレクションの出来を上げている印象で、さすがこれほどの大作となるとその辺りも抜け目ないな、と素直に感心させられました。バレットのテーマ(裏切り者の烙印)のモチーフを「神羅魂」という正反対の楽曲に転化してしまったことだけはさすがに気になりましたが、既存の楽曲たちもゲーム内ではジュークボックスで縦横無尽にアレンジされながら、「闇に潜む -あやしい男-」「虐げられた民衆 -ペグ盗賊団-」などはリアルになったゲームにおいて違和感なく聞けるシーンを選んで挿入されていますし、「神羅のテーマ」「旅の途中で」「急げ!」「俺は…誰だ」「教会に咲く花」「腐ったピザの下で」「不安な心」「スラムのドン」「神羅ビル潜入」「血の跡」などベストアルバムには入らないけど決して捨ててほしくはない曲もきっちり活かされていますし(重要!)、「FFVIIメインテーマ」は昼夜で二種類のアレンジが聞けますし、「アバランチのテーマ」「スラムの太陽」「真夜中のまちぶせ」「ウォール・マーケット」「3ギル芝居」「落日の街」「ライブラリフロア」・・・といった新曲も世界観にしっかり馴染んでいます。もちろん「J-E-N-O-V-A」「片翼の天使」などもこれまでのアレンジでは聞けない新しい世界が長大に展開されており半ば飽きていたような聴衆にも新鮮な息吹を投じていますし、「闘う者達」にいたっては何種類アレンジされているのか最早数え切れないくらいです。

何曲か紹介しようかと思いましたが、とても絞りきれません。まだ出て日が浅いですしこれからプレイされる方もいらっしゃるでしょうから、ここは皆さまに委ねたいと思います。

FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE Original Soundtrack(植松伸夫浜渦正志、鈴木光人、関戸剛ほか)

FF7RのPS5版に併せて追加されたユフィシナリオのサウンドトラック。この部分だけでもCD2枚分もあるのですが、ダンジョン楽曲で非常に新鮮な楽曲がありましたのでここに紹介しておきます。

サクソフォーン・アンサンブルを活かした楽曲。こういったジャズ・フュージョンの要素はFF13以降時折聞くことはできたものの、ここまで強くサクソフォーンに焦点を当て、かつ重奏される曲というのはFFでは珍しいと思いました。さらに、快活な楽曲だけでなく「メインピラー整備場」のような不気味な楽曲も同じ編成でこなしているところに、プロダクションの共通性・面白みを感じますが、これはどちらかというと音楽創作者側の視点かもしれません。

・Kapustin: Orchestral Works(フランク・デュプリー)

2020年に惜しくも亡くなったロシアの作曲家、ニコライ・カプースチン。ジャズの書法でクラシック・スタイルのピアノ楽曲を多く残したことで界隈では知名度が上がってきていますが、ドイツのピアニスト、フランク・デュプリーがそのオーケストラ作品(ピアノ協奏曲等)を集めたアルバムを2021年に出したようです。超絶技巧をそつなくこなすピアニズムは作曲者本人を彷彿とさせ、カプースチン・ファンの我々(なんの複数形だ)としてはウンウンと頷きながらカプースチンのまだ見ぬ音楽世界を楽しむことができました。

カプースチンピアノ曲は「ソナタ」「変奏曲」「エチュード」のようにクラシックのスタイルで題されたものが多く、その実、音を聞いてみるとジャズの即興のように聞こえるところが魅力であるわけですが、同じことがオーケストラを通して起こると、「ピアノ協奏曲」というタイトルがついていてもビッグ・バンドのような親しみやすさがあったり(実際、打楽器もドラムセットで演奏されています)、主題の合間にオーボエやフルート、ストリングスの流麗な響きを聞くと、ああやはりクラシック由来でもあるな…などと思わせられたりで、一曲でさまざまな音楽の良さを聞くことができます。あれこれと思考チャンネルを切り替えながら真剣に聞くのも良いですが、おそらくは流れ来る音の奔流に身を任せて深く考えずに楽しみ切ってしまう方が良いでしょう。

Piano Concerto No. 4, Op. 56

Piano Concerto No. 4, Op. 56

  • Frank Dupree, Wurttemberg Chamber Orchestra of Heilbronn & Case Scaglione
  • クラシック
  •  
  • provided courtesy of iTunes

・Vitamin(クラフトワーク

昔から音楽的な友人(?)の間では幾度となく話題にあがる電子音楽の始祖的存在クラフトワーク。秋のシングルを発表した後に音楽的刺激を得たくなり、勧めていただいたアルバムをいろいろと聞いていきました。ちょうどサブスクリプション・サービスを再開した時期で、こういった音楽受容が可能になった時期ならではのアクションといえます。私自身の新曲はピアノ・ソロでしたし、上に挙げた音楽はどれも生楽器の良さが活きたものが多かったため、電子音楽が特別心地よい時期だったというのもあるかもしれません。

Vitamin

Vitamin

  • provided courtesy of iTunes

私の音楽的嗜好にピンポイントに刺さったのが「Vitamin」であった理由は何故だか良くわからないのですが…古臭すぎず、新鋭的すぎず、暗すぎず、柔らかな音使いで、何よりも耳に残る楽曲だったのは間違いありません。カリウム、カルシウム、鉄分、マグネシウム、炭水化物、タンパク質、ビタミンA・B・C・D…というようなフレーズが時折挿入されるだけの曲なのですが、耳に残ってしまったものはしょうがない。特別仕事に疲れていた時期で、退勤ぎわに電車のなかでひたすらこの曲ばかりを聞いていたことになります。

他の曲では「Pocket Calculator」も良かった。日本語版の「Dentaku」もあるそうで。ボクハオンガクカ デンタクカタテニ・・・ドイツの方に「サッキョクスル」は発音しにくいだろうなあ!

・FUSION(Perfume

11月にVitaminばかりを聞いていた電子音楽嗜好は、12月になるとどういうわけかPerfumeへ向きました。久しぶりに「ポリリズム」をちょっと聞きたくなっただけだったのですが、流れで最新アルバム?を聞くなかで一際異彩を放つ「FUSION」に心を捉えられてしまいました。Perfumeは明るい快活な音楽が多いと思うのですが、FUSIONはダークでドライな音使いが印象的なダンスナンバーと思われ、声もそんなに多くなく時折軽くシャウトする程度で歌詞は「あたしとフュージョン」のみ。実に面白い。あとは低音オスティナート好きな自分に刺さったという側面もあったかもしれません。単純なベースラインでなくて結構こねくり回してある(Iの音がどれか判然としない)のも好み。

FUSION

FUSION

  • Perfume
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

それをこうして紹介するのが適切かはわかりませんが、同じ嗜好をお持ちの方がいたら面白いな、なんて思います。

・番外編

マリオカート8デラックス

私にとってマリオカートといえばバトル。一時期気を紛らわせるためにやたらとプレイしたので、いろいろの曲が耳に残っています。

・バトルスタジアム:ファンクな曲で、シンセサイザーをはじめクセのある音が多くて面白いです。

・バトルコース1:初代の楽曲。シンプルなリメイクながらシンセサイザーモジュレーションなどはなかなか凝っています(イヤホンで聞いてみよう!)。

・デカライン高架下:フォロワーさんによるとスプラトゥーン由来とのこと。なかなか耳に残る楽しい音楽です。

夜な夜なダンス(和田アキ子 X フレデリック

YouTubeで流れてきたわけですが、確かに耳に残る楽曲で一時期よく聞いていました。


紅白歌合戦を見ていても思いますが、最近は大御所も冒険をするようになったのでしょう。賛否両論あるでしょうが、過去の実績に頼らずヒットを狙おうとする姿勢は悪くないのではないかと私は思います。調べたところでは過去のいろいろがあって簡単に紅白復帰とはならなかったようですが、正しい競争が行われるとよいですね。復帰されるなら「あの鐘を…」みたいなロングトーンが聞ける曲の方が、個人的には好みですが。