聖剣伝説2・3や双界儀の作曲で知られる菊田裕樹さんのC88での新作。8曲入り34分、程良い分量でまとまっていて一気に聴けます。
今回のCDは泉鏡花の戯曲「夜叉ケ池」をテーマにしたサウンドトラック集です。ブルガリアンヴォイス、ジェゴグ、ガムラン、和太鼓、鐘、ブーズーキ、など、多彩な民族楽器を駆使し、菊田裕樹ならではの音楽世界で、泉鏡花の文学に挑みます。
公式の紹介の通り、世界各地の民族楽器(声を含む)が縦横無尽に用いられ、それぞれの魅力を凝縮した無国籍音楽に仕上がっている。それでも随所で菊田さんを感じるフレーバーが込められており、ファンなら思わずニヤリとするところではないでしょうか。
ちなみに上記の戯曲に関してはWikipediaの記事も参照。
- 夜叉ケ池
- 鏡花
冒頭の2曲から、ボイスや民族楽器を全面に打ち出した怪しげな雰囲気で始まります。「夜叉ケ池」のマイナーとメジャーを行きつ戻りつするコード使いと、両曲に聞かれるシャウトのようなクレイジーな声に胸をざわざわさせられる。
このエスニックな世界観は、菊田さんファンは元より周りの光田さん好きにもクリーンヒットしそうな気がする(光田さん好きには「変な声好き」も多いですしね!)。
- 剣ケ峰
THE・菊田節ともいうべき、ミディアムの16ビートでパーカッションやクロマチックな伴奏がチャカポコ刻まれる一曲。この曲集で「あー菊田さんだ!」と真っ先に感じるとしたら多分この曲。あえて聖剣伝説と比較すると、パーカッションの材質として金物が多く煌びやかさが増していることか。あと木質・膜質のパーカッションは少し柔らかめの音作りになっているので、よりシンフォニック寄りなサウンドと言えるかも。
この曲でもクワイア風のボイスが現れ、独特の世界観をプラス。この曲集の中では一番怪しげ成分は少ないクリーンな曲かも。あと、やっぱりベースが格好良い。
- 沈鐘
冒頭の民族楽器が印象的ですが、すぐに「剣ケ峰」と同等の速いテンポにシフトし、再び一気に怪しげな世界へ。
この曲は何と言っても、中間部に一度だけ現れる弦とベースが素早いフレーズでユニゾンする箇所が白眉。これも菊田さんの真骨頂であり、両者がフレーズを終え、ふっと音の「間」が生まれるところにすこぶるハッとさせられる。そしてやっぱりベースが以下略。
- 白雪姫
物悲しげな性格のスローな一曲。個人的にはサンポーニャの伴奏が印象的。やはりこの音はすごく「風」を感じる。
- 眷属
「けんぞく」と読むようです。楽曲的には「剣ケ峰」「沈鐘」の性格を引き継ぎながらも、けたたましく鳴り響くガムランが一層の狂気を感じさせます。全般的に「鏡花」へのリファレンスが見られる。
- 龍神来迎
これもテンポの早いチャカポコ系(そんな括りでよいのか)。パーカッションに重点が置かれていて、特に祭祀的な性格を感じます。アンクルンが入ってるかな?木や竹のフレーバーが感じられて、シリアスで重厚な世界観の曲なのに、聞くとちょっと体内が浄化されるような感じもするのが不思議です。
- 宴
単旋律のみの静謐な終曲。余韻に圧倒されます。
元の戯曲に関する知識があればもう少し有機的なレビューもできるのでしょうが、まずはこんなところでご容赦を!菊田さんが好きな方はもちろん、民族楽器好きな方、怪しげな世界観が好きな方、変な声が好きな方(笑)にはオススメ。2083Webショップに置かれているので、コミケに行けない方でも購入可能です。