liberty 2
    New Album "COMFORT 2" 2023/4/30 release


6年ぶりの譜面制作に寄せて

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先日参加させていただいた「浜渦ホイホイ2」にFF13のブレイズエッジで参加させていただきましたが、原曲がオーケストラで完成されていることもありアレンジの形態はピアノソロ、そして演奏だけでなく譜面も付いた動画にしてみました。

一時期譜面動画を上げていた時期があったのですが、なんと6年も前になるのですね。自分でもびっくりしてしまいました。

「譜面より演奏を」の6年間

ニコニコ大百科でも触れていただいていたかと思いますが、譜面を作らなくなったのは、あまりに時間がかかりすぎてしまうためです。趣味レベルとはいえピアノをしばらく重点的に弾いていた時期があったので、どうせ譜面を作るなら半端なものは作りたくなかったんですね。特に自分の場合、両手を組み合わせてビートを打ち出すような奏法が多いため、楽譜にするなら左右の手をどのように使うか分かりやすく書きたい。見にくいままで皆さんに渡したくないのです。
大学院で譜面を作る機会があったので、それに併せて数曲アレンジしたのが6年前にアップした三本ということになります。今でこそ演奏動画のアップ数は100本を超えましたが、このときはまだ1本も上げていなかった。時間をかけて譜面を作り込むことより、長年自分が弾いてきたいろいろのゲーム音楽を、荒削りで良いからどんどん打ち出していきたかったのです。

譜面を作るなら誰もが弾けるものを

さて、上記の理由で今回ピアノソロアレンジを選んだわけですが、せっかくの企画参加ということもありますし、何か新しい試みを入れたかった。そこで、譜面制作を復活させ、演奏と合わせた動画にするという案に思い至ったわけです。まずは即興をMIDIで流し込んで耳コピで補完しながら仮譜面を作り、奏法を吟味したうえでレコーディング、最後に浄書という流れでした。長年買おうと思っていた浄書ソフトをようやく購入し(6年前は体験版で作っていました)、細かい浄書手法を専門書とネットで逐一調べながら浄書していきました。普段使っているDAWがなまじ譜面エディタに特化している分、似たような見た目なのにちょっとした操作方法が全然違っていて、一小節ごとにつまづきながら書き進めるような有様でした。しかし、個人的に譜面を起こすなら誰もが(弾こうと思えば)弾けるものを!という大前提があって、オクターブを超えるような部分での代案の提示なども、何とか最低限は実現できたかなと思っております。また全体としても、副次的な声部や複雑な音型を極力排し(盛り上がりの部分では逆に足したフレーズもありますが)、シンプルなリダクションに落とし込んだつもりです。ブレイズエッジの膨大な音符量を知っている方にとっては、原曲がオーケストラな割には意外に譜面がすっきりしていると感じられたのではないでしょうか。

実質浄書一発目なので、まだまだ市販楽譜レベルには程遠いですが、こればかりは経験を積むよりありませんね。楽譜は時間がかかる、という印象は今も変わりませんし、そう頻繁にできることでは正直無いのですが、演奏動画もだいぶ揃ってきたことですし、また折を見て試みていきたいところです。

誰もが弾けるものを、とは言いつつも、演奏が難しいところがあったのも事実。たとえば11-12小節や15-16小節の速いパッセージはこれまでの即興では省いていたところでしたが、譜面を起こす上では原曲の味として残すことにしました。元々が即興的なフレーズなのですが、この曲のファーストインパクトともいえる部分なので、変えたくなかったのです。しかし一音一音拾った譜面を実際に弾こうとしてみたとき。今回は本当に弾けないかもしれない、企画に間に合わないかもしれないと思いました。いや、凄腕ピアニスト(特にクラシック出身)の方なら少し練習すればさらっと行けてしまうのかもしれませんが、元来勢いだけで弾くタイプの自分には物凄く難しい部分なのです。特に15-16小節の方が数時間練習しても弾けず、同じことを何日か繰り返すうちに、ようやく成功テイクが生まれるようになってきました。絶望的な困難に直面してそれを乗り越えるという感覚を、久しぶりに味わった気がしました。

しかし、ただ一つ言えることは、譜面になっている以上それを読める人であれば、テンポを極端に遅くして一音ずつ弾いていけば、100%弾けるのも事実なのです。そういう意味でも、分かりやすい譜面であることは大事な要素になってきます。遅いテンポで弾けさえすれば、練習すれば必ず速く弾けるようになります。まして原曲を知っている人であれば、曲想が頭に入っていることが大変な助けとなりますからね。是非皆さんにもチャレンジしていただきたいですし、自分自身、譜面を作るのであれば演奏意欲が掻き立てられるようなもの、そして弾けたときには原曲の好きな部分を自分の演奏を通じて体感できるようなものを作りたいと思うのです。