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daybreak
New Album "daybreak" 2017/4/30 release


『PARALLEL』各曲について

2013年1月、札幌の実家で私は電子ピアノに向かって来るべきM3-2013春新譜のためのスケッチをしました。既に出来上がっていた「Float Emotion」「感傷と夜想」を含めて全10曲のアルバムを目指していましたが、前作『VEIL』から一年半を経ていたためにある程度構想がまとまっていた楽曲も多く、スケッチは創作というよりも記録に近い行程だったように思います。

アルバムの終曲には静かな曲を置いて余韻を残すことが多いのですが、今回は比較的ポジティブなイメージのアルバムだったので最後は明るい曲でスパンと終わる展開にしたかった。スケッチした8曲のうち着想してから一番日の浅い「Lifework」を最後に持ってくる計画を立てましたが、それよりも前に着想している別のミディアム曲があり、「Lifework」が間に合わなければ中盤にミディアムを置き終曲は「Parallel」になる可能性がありました。結果的には当初の計画通りに曲順を固めることができたので良かったです。往々にしてこういったアルバム制作は最初の直感を守った方が良い結果が得られることが多いように思います。
スケッチ後は数週間スパンで一つ一つの曲に構成決め・加筆修正・アレンジを施し、数回にわたるレコーディングを経て完成しました。音大事務の仕事が集中する期間もありシビアな環境に置かれることも多かったですが、その分一曲一曲に集中して取り組めたのかもしれません。


Download

1. Float Emotion

あまりメロディを主張しないリフと、変拍子を含んだフュージョン感が特徴的なナンバー。勢い重視の曲なので初段階では荒削り感が強かったですが、LBT氏のアレンジが加わって完成度が上がりました。M3-2013春で事前知識なしにご視聴いただいた方の反応も好かったです。最後のポリリズム的な部分がポイントです。

2. One Way

「一本の道」というより「一方通行」の意味で付けたタイトル。振り返ったらぶつかってしまいそうな、ひたすら前に進むしかない、少し危なっかしいイメージを内包しています。構成を極限までシンプルにショートに圧縮しており、Aメロ・Bメロ・サビというコーラスの切り替わりがすぐに訪れます。中間部はロールによるスネアを中心にシンフォニックなエッセンスも現れ、全体的に盛り沢山かつ少しひねったポップといったところでしょうか。

3. 家

ポジティブイメージの今作において最も内省的かつ瞑想的な曲。とはいえ、実はメロディー重視の一曲でもあります。息の長いメロディーをしっかり歌い切る。それが何度も現れ、だんだん熱を帯びていき自分の感情が入っていく。ある意味ではとてもポップな曲と言えるかもしれません。

4. Triple Tap March

タイトル通り、あらかじめリズムを決めて作った曲。少し近未来SF調、一方ではクライムアップ・マーチ調なところもあるからこそのブラスロック感のあるアレンジとなっています。とはいえヴァイオリンが入って少しオーケストラ寄りにもなっているのですが。
サビでメジャーとマイナーが交換するところが特徴的で、明るい曲調でありながら一方的に明るいだけでもない性格が垣間見えます。Cメロはもっと展開させる案もありましたが、ストレートな曲に仕上げたかったので新しいメロディーや調を入れず、シンプルにまとめました。
ピッコロ・トランペットとバリトン・サックス、ティンパニ等、久しぶりに使う楽器が多かったです。あと、Bメロのハイハットの打音が多いのは山脈さんの影響です。

5. 出来損ないパペット

今回のアルバムで最もアヴァンギャルドな曲を挙げよと言われればこの曲を選ばざるを得ません。そもそもピアノが無い。4曲続けて聞いてきてそろそろソリッド・ピアノに飽きてきた人のための口直しであり、作曲者としての自分を主張するための一シーンでもあり、この後に推進力のある曲を持ってくるための前兆としての一曲でもあります。
マリンバによるミニマル・ミュージックスティーヴ・ライヒを思わせますが、実は映画音楽に端を発しています。昨秋制作していた映画音楽について、あるシーンのために幾つか曲を書きましたが、これはその内の一つが底本になっています。

6. 192 II

流れを一新、アルバム後半の序曲であり、ミュージカルで言うところのアントラクトともいえる楽曲。草案の段階から、最初に一発スネアを入れることは決まっていました。二拍空けも特徴的ですが、この曲の極端に早いテンポに合わせると頭の中ではこのようにしか鳴りませんでした。
「Solid Work」のI・IIと違い、明確に前作と関連性があります。似た構成、似た展開。前作ではBメロに違うメロディが現れましたが、今回は一曲を通してほとんど全て同じモチーフが現れ続けるところに特徴があります。その分楽曲の勢いも増し、演奏時間も前作より短くなりました。
共通点としては、前作に引き続きアナログな電子音が登場するところ。また、前作よりオーケストラ成分と民族楽器成分が減り、ロック色、バンド色が強められています。流れを失わずattaccaで次曲につながります。

7. 翳る正午のメトロポリス

今作の中でも最初期に着想した曲。西新宿のビル街、曇り、強風、鬱屈、くすぶる激情、といった断片的なイメージ・モチーフの集合体ともいえる一曲です。
結果的にはテンポの遅い「Friction」のような性格となりました。ただ音を詰め込むのではなく強烈な印象を帯びた一打ちの和音、そしてそのリフから発展する曲を作りたかった。サビで音が一気に増えるところも、構想段階でのイメージそのままです。
音色面で言うと今回のアルバムで唯一ギターが登場する曲であるのと、強烈なホルンが印象的です。最後のはち切れんばかりのビートはある種パンク寄りの性格をも含んでいるかもしれません。

8. 感傷と夜想

即興的でない、再現性のある「Gentle Sorrow」を作ろうとしました。サビの入る前の無音がポイントです。一瞬の緊張の後で感情が爆発します。サビは重音トレモロエチュードの片鱗も垣間見えます。

9. Parallel

2つの和音から少しずつ発展する曲。今作のなかでは最も壮大なイメージで、人生観を伴う、人生の重要なシーンのハイライトのための曲と言えるかもしれません。淡々としたフレーズの中に、少しずつ感情を織り交ぜていきます。

10. Lifework

本当はもっとピアノが濃密に入る曲でしたが、ヴァイオリンやトランペットのメロディーが強い曲だったのでサポートに回りました。その他の音色としてはベースが肝であるのと、「Triple Tap March」に引き続き山脈さん譲りの高速ハイハットが登場します。
アルバム『MOVE』の頃から書いてきた「攻撃的かつポップ、繊細かつロック」の権化のような曲で、「Aim Toward」と「Invincible」を経て出来たミクスチュアのような存在でもあります。楽曲の持つ主張としては「Parallel」と同じで、それをもっとアグレッシブに書いた曲です。