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daybreak
New Album "daybreak" 2017/4/30 release


作曲家のプロ意識とは 1.音楽編

先日、僕の教わっている大学の先生からアルバム(COMFORT)の感想をいただく機会がありました。先生の専門は作曲で、クラシックから電子音響音楽まで幅広く取り扱っておられます。またテレビ等の劇伴音楽についても相当の知識と経験をお持ちの方です。
いろいろ言っていただいたのですが、大体要約すると

「音楽的なことはともかく、音響面・演奏面でもう少しプロ意識を持ってほしい」

というわけで、このエントリでは「作曲家のプロ意識」について、言われたことを引き合いに出しながら項目ごとに分けて考えてみようと思います。専門機関に二年身を置いただけの立場から説明するので誤り等あるかもしれませんがご容赦ください。まずは音楽面について。

何故「音楽的なことはともかく」なのか

「音楽的なことはともかく」と深く言及しなかった理由は、先生の学んだ時代に比べて音楽文化が大きく変わったことによると思います。昔であれば、音楽について専門的に学んだ人、経験を積んだ人でないとプロになれない潮流がありましたが、今は趣味から始めて組んだバンドや独学の作曲によって表舞台に出てくる人が増え、プロでも楽譜が読めないという人も居るくらいになりました。当初は彼らこそがプロ意識が足りないという批判の矢面に立たされていたのでしょうが、大衆がそれを認めるようになると十分プロとして成立しているという見方ができるようになってきます。
僕もそういう人たちと同じなのです。まだ表舞台に立っているわけではありませんが、専門的に学んだわけではなく独学で作曲をしています。専門教育の期間を二年経た今でも体系的な音楽教育を受けたとは言いがたく、やはりこちら側の人間なのだと思っています。このままの知識量で表舞台に立つことも可能でしょう。ただ、そういう機関で教育を受けた身である以上プロ扱いされるわけなので、最低限のプロ意識は持ってほしいという意味なのだと思います。特に音響面での専門性が強い科なのでそちらを強調されましたが、ゆくゆくは音楽面での知識量が明暗を分けるタイミングが必ず出てくるはずです。

音楽面で必要な知識

ではどういう知識が必要になってくるのか。これはどういうカテゴリが設けられていたのかに照らし合わせると説明しやすいように思います。具体的にはクラシック、ジャズ・ポピュラー、電子音響の三分野がありますが、ここでは音楽面なので前の二つに絞って。

クラシック

まず和声に関する知識が必要です。禁則事項などを知ることで自分の作る和声のどこが正統でどこが例外なのかを知ることができます。和音の縦の動きが理解できたら、次は横の動きを理解する上で対位法を学びます。これにより旋律の置き方や重ね方が充実し、立体感のある曲が作れるようになります。デモテープなど作曲に関する審査を行う場合、和声はもちろんこういった旋律の使い方(オブリガートなど)がきちんと出来ているとポイントは高くなるようです。求められている音楽の種類にもよりますが、メロディーのある音楽ならまず出来るにこしたことはないでしょう。
あとは楽器法、管弦楽法。楽器の使い方を知らないとやはり音楽のレベルは高まりません。楽器の出せる音域に始まり、得意とする奏法や特殊奏法までさらえると尚良いでしょう。専門音源では奏法ごとに音が用意されていますので(僕がよく使うのは弦楽器のトレモロや駒の上で弾くsul pont.あたり)音を確認しながら学ぶという面では便利になってきていると思います。あとは既存曲のスコアをよく読むこと。こうした過程を踏んだ上でオーケストラという編成が生まれるわけなので、僕がオーケストラを打ち出すのに戸惑いを感じていたのはそういった理由からです。

ジャズ・ポピュラー

こちらも大体はクラシックと同じで、和声とは系統が違いますがコードに関する知識がまず求められます。進行やテンションなどについてですね。コードとメロディーだけが書かれたリードシートを渡され、伴奏を加えながらピアノで弾くということもやりましたが、ピアノ・ソロを中心としてやってきた身としてはどうしても左手でベースラインを演奏してしまうので(ベーシストが担当するので基本的に不要)左手でコード伴奏、右手でメロディーというのは結局今でもあまり出来ないままです。この場合たとえばコードにCと書いてあってもただCを弾くのではなく、CM7にしてみたり、テンションで9を加えてみたりということが出来てくると深く理解していると見なされました。どちらかというとジャズ寄りの見方なので必ずしもそうする必要はないと思いますが、知っていると知らないのではやはり差が出てくるでしょう。音楽に合わせてそういった音をオプションで選択できるようになるとやはり幅は一気に広がります。
楽器法に関しても大体同じで、移調楽器について学んだり、バンドスコアを読むことを薦められました。僕の場合はトランペットの譜面を書く練習をしました(Bb管で書いたので実音より1全音高い表記になる、つまりF#mの曲だったのでG#mでシャープ数が大変なことに…ポピュラー編曲で原曲と違う調に移調されるのはこういう理由からです)。結局この譜面は演奏には結びつかなかったのですが、バンドスコアを買って管楽器からギター、キーボードやドラムス、パーカッションの書き方まで学べたので良い機会でした。もっとも慣れている人は金管重奏のスコアなどもどんどん書いてましたが…。あとバンドを組むことはしきりに薦められましたね。楽器について手っ取り早く学べるのもあるでしょうが、特にクラシック系の学生が弱い「リズム」を体感するという意味合いも強いようです。

劇伴・BGM

これはちょっと違う区分ですが、劇伴音楽やBGMを書くのは特有の知識と経験が必要になってきます。何が特有かというと音楽単体で完成するものではないということですね。役者の演技、映像、シチュエーションなどさまざまな要素に合わせる必要があるので、ディレクター(演出する人、映画ならば監督)と話し合ってどういう音楽が必要なのかを引き出し、それに合わせて音楽を作る必要があります。音楽に詳しい人であればイメージしている音楽や参考曲を伝えてもらったり、逆に詳しくない人であれば「こういう音楽を求めているのでは?」と提示してみたり。早い話がコミュニケーション能力…というと就活サイトみたいで嫌なのですが(笑)。
あと、自分の音楽に対するある程度の割り切りが必要になってきます。「明らかに向こうが求めてないな」と思った音楽はいかに自信作でも早々にストックに回してしまう方が賢明です。逆に自分の主張を通したいときにはその理由をしっかり説明しなくてはなりません。このシーンと旋律を関連させることが大事なんだ、効果音とぶつからないために静かな音楽が必要なんだ、など…。向こうにも絵や演技に合わない、全体的な音の流れに合わないなどの言い分があるので(特に後者を見る目はやはり作曲者より優れていることが多いです)上手く折衝して納得の行くラインを模索するのがよいでしょう…締め切りの範囲内で(笑)。劇伴は現代において急に作曲家に求められるようになった分野ですが、やはり純音楽を学んでいるだけでは身に付かない特殊な面があるので最初はどんどん飛び込んでみるくらいが良い気がします。自分を含め周りを見ても大学のサークルや友達の企画から始めた人が多いようなので、身近にそういう機会がある人は積極的にアプローチしてみるのが良いでしょう。


音楽面についてはこの辺で。最初からこんなに書くつもりは無かったんですが…次回は音響面についての予定です。