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elementscapes
        最新アルバム「elementscapes」2015/4/26 release

「COMFORT」解説

「LIBERTY」に倣って今作についても解説を書いてみようと思います。前は割と堅い話になってしまった感があるので、今回はもうちょっと肩の力を抜いて緩く書くつもりです(多分)。

はじめに

全体的にはライナーノーツにある通り「安息」を感じた瞬間の記録と銘打っていますが、朝とか夜とか一日の流れを感じる曲が多かったのでその軸に沿って曲を並べてみました。つまり朝の「A Morning」から始まって、「静寂の夕暮れ」を経て「光の空中散歩」「吹雪の夜のカリヨン」が夜、みたいな感じです。結果的に休息日を一日通して描いたような作品になりましたね。季節を感じるキーワード(クノハの紅葉とか、吹雪とか)に注目することも考えたんですが…光田さんのキリテの二番煎じになりそうだったのでやめました(笑)。
休息日に聴いてほしいとか、朝の曲は朝聴いてほしいとかは全くないです。僕個人としては、何となく肩の力を抜きたいとか、疲れたときとか、眠れないときとか…に合うアルバムじゃないかな、と思っています(知り合いは寝るときにかけると「A Morning」で既に良く眠れると言ってくれて、それは願ったり叶ったりなんですがたまに最後まで聞いてくれると嬉しいな…笑)。
使っている楽器はピアノをメインにいろいろありますが、共通して音数はそんなに多くないです。僕の曲はピアノ曲を中心に激しいものが多くて「スローなものも聴きたい」とかたまに言われるので…今回ここぞとばかりに控え目な曲を打ち出した感じですね。反動で今後しばらくアグレッシブなものが多くなるような気がします。

各楽曲について

01 A Morning

けだるい感じのピアノ曲です。実際に朝に作った曲で、寝ぼけ眼のイメージが良く出ていて個人的には気に入ってます。作ったといってもこの曲の場合は即興で録音したらもうほとんど完成形で出てきたので、全く苦労しませんでした…いわゆる降りてきたというヤツでしょうか。その分つかみどころのない気まぐれな展開になってしまっていますが、この曲の場合はアリだと思います。これでも途中テンポが早くなる部分を弾き終えた辺りで「いかんいかんこのままではタダの即興になってしまう、ここらで元に戻して構成をしっかりさせよう…」などと意識はしていたのですが(2'45のところで一番最初に戻ろうとしています)、気まぐれが炸裂してすぐにまた即興に戻ってしまったのでした。

例の「自分用楽譜」の一部です(読みにくさ真骨頂!)。これはもうすぐ終わるかという部分ですが…妙に音域が広いんですよね。ピアノの一番上と一番下くらいを使っていて、腕を異常に広げて弾いたりしました。作曲したときは電子ピアノだったので、グランドピアノでの録音のときに「イメージと違う音が出てしまうかな」と懸念していたのですが、実際に弾いてみるとむしろ低音と高音の差が強調されて、思いのほか良いアンビエンスになって出てきたので嬉しかったですね。録音しながら独りニンマリしてました(笑)。

02 今、ひとたびの安息

アルバムのオープニング(=休息日の幕開け)として作った曲で、今作で一番最後に出来た曲です。当初はミュージカルの序曲のように、アルバム中の曲のモチーフをつなげたメドレーのようにしようかと思っていたのですが…それだとこの曲だけ聴けば満足!なアルバムになりそうだったので(笑)結局「シラノハ」と「誰がための歌」のモチーフを少しだけ使った今の形に落ち着きました。あと、この曲だけはオーケストラでやろうと最初から決めていました。「A Morning」のピアノでゆったり始まって、オーケストラの序曲につながるというイメージはかなり前から固まっていたように思います。
静かに曲が始まって、最初にズガンと合奏部分が来るのですが…ここを明るい和音にするか暗い和音にするかで結構悩みました。結果的に暗い和音にしたのですが…休息日が始まったときって、必ずしも「さぁ休めるぞ!」と解放感に満ち溢れてるわけでもないと思うんですよね。疲れがたまっていたり、日常の悩みを抱えていたり…そういう憂いの意味を込めて暗い和音にしました。そのおかげでその後少しずつ曲調が明るくなっていくのが救われた気持ちになるというか、曲全体を見渡してもこの方が良かったと思っています。
オープニングでありつつ、アルバムタイトル的な位置づけでもある曲です。アルバムタイトルを明示するために「COMFORT〜今、ひとたびの安息」という曲名にしようかとも思っていたのですが、曲名を12個並べたときに「あ、浮いてる」と思ったのでやめました。「CHRONO CROSS〜時の傷跡」みたいで面映かったのもあります(笑)。今思うと長いタイトルでも良かったかもしれませんね。

手帳にメモした構成案。ある夜寝ているときに悩んでいたこの曲の構成がバッチリ見えて、書き留めなきゃ!と思いつつその日は寝てしまったのですが…翌日地下鉄の中で完全に思い出して、大急ぎで書き残したという経緯がありました。打ち込むときはこの通りにやるだけだったので、マスターアップ前日という状況ながら至極スムーズに出来ました。寝ているときのインスピレーションをモノにできる機会はなかなか無いので…実は結構貴重な曲になったのかもしれません。

03 Fantasia

大仰なタイトルですが、アコギのみのシンプルな曲です。眠気覚めやらぬままに外を散歩しているようなイメージでしょうか(実際曲作りなどで夜通し作業をするような時期には、朝になると少し散歩してリフレッシュすることが多いです)。生録音の計画を立てて頓挫したのですが、ソフトシンセが上質なおかげか割と生っぽく聴こえるようです。製作期は生音への憧憬があったのであくせくしていましたが、ソフトシンセだと割り切ってもこの曲の味だと考えられるようになってきました。

演奏してもらうことを考えて、浄書ソフトのフリー版であるFinale Notepadを使って見栄えだけは良く仕上げてみたのですが…この曲も即興ベースで作ったのでいかにも鍵盤弾きの譜面というか、ギタリストにとっては見にくい楽譜だろうなぁと思います。コードの表記は多分合ってるはず…いや表記うんぬんよりも、やはり即興を含んだあいまいさが抜けてない感はありますね。和音の表記は絶対に抜きたくない音を確実に記譜して、あとは演奏者と相談して録音しながら決めていくのが本流のやり方なんだろうと思います。うーん難しい。
この曲の中間部にも「シラノハ」の旋律が使われていて、上の楽譜の下段のメロディはまさしく「シラノハ」の音型です。アルバムの核となる旋律なので、先のオープニングも含めてこのように少しずつモチーフを暗示していくわけです。…言うほど狙って作ったわけではないのですが(笑)。
なおM3 Festaで配布したミニCD「Les fetes」に収録した版とほぼ同じですが、明らかにギターに無理をさせているところ(高速トリルなど)二、三箇所を普通の弾き方に修正しています。

04 からの花瓶

キャッチーなピアノ曲。立ち位置としては前作の「幸福」にとても近いですが、こちらの方が少し暗めの曲調で、力強さのようなものもあると思います。ピアノ曲を本格的に作り始めたときは自分の中でカプースチンの影響が大きかったので、とにかくピアノ一台でお客さんの度肝を抜けるような曲を目指して「Solid Work」に始まる一連の曲を作っていったのですが…この頃にはもう技巧に凝るのに食傷気味になっていた。そういう折に出来た曲なので最初は「普通すぎてつまらない」と思う節もあったのですが、すぐに「こういう曲もいいな」と感じるようになったし、こういう曲を好んでくれる人も多いことに気づいたことを覚えています。
ちなみにサイトのMusicページで公開している「Empty Vase」はこの曲を元にアレンジしたものです。ダンス・ミュージックを作らなければいけないシーンがあって、アレンジに集中するためにはキャッチーな旋律が元にあった方がやりやすいだろうと考えたんですが…真っ先に浮かんだのがこの曲でした。それだけ当時の自分にとっては印象的なメロディが書けたということなんだと思います。
あと題名は花をもらった思い出からそのまま頂きました。部屋に花を飾る習慣がなかったので。

05 炭鉱の町

「COMFORT」には少し浮世離れした超時間的な曲がいくつかあって、この曲と次の「Les fetes」がそれに当たります。「吹雪の夜のカリヨン」もある種現実離れしていますがあれは明確に夜の曲で、この二つは少し一定の時間に定められないところがあります(いずれも夜という感じはしないのですが)。休息日の位置づけとしてはふらりと出かけた旅先のイメージとしての二曲になります。見知らぬ町、見知らぬお祭り(Les fetes)という日常から離れた光景がアルバムの真ん中を占めるわけです。
ライナーノーツに空想上の寂れた町と書いた通り、特定の町を描いたわけではなくて…自分の中にあるファンタジックな風景と結びつけた曲とでも言うのが一番近い表現だと思います。砂を踏みしめる音、風の立ち込める音、少しくすんだ飴色の風景。ここぞとばかりに非日常な雰囲気作りに徹しました。全体的に淡々とした曲ですが、後半の付帯音がなくなるところは町自体の持つ寂しい感情を込めたというか、叙情的な色合いが強くなる部分です。
自分でもかなりマニアックな曲を書いてしまった意識があるんですが、不思議と仲間内では受けが良くて…耳に残るという人も多いようです。アルバムにアクセントを入れるという意味ではこういう曲を書く力というのも持っておくべきなのかな、と思いました。いやどちらかというとシングル的な曲が苦手なのを先に克服したいんですけどね。

06 Les fetes

非日常ナンバーの続きです。M3 Festaのために書き下ろしたお祭り曲ですが、こういう民族色の強い曲になってしまう辺りが自分らしいと思います。まったりした曲が続いたので、この辺りで気分を一新したくて躍動感のあるこの曲を持ってきました。当初はアルバムの中で浮くことを懸念して静か目にリアレンジすることも考えたのですが、激しくありながらアコースティックな今の版が一番理想に近い形だと気づいたのでそのまま収録することにしました。
とはいっても結構修正を加えていて、M3 Festa版とはメインのヴィオラやベース、マリンバの音を変えています。特にヴィオラの音は大分生に近づけることが出来たので満足しています。ベースは前の版の力強いスラップ風の音も好きだったんですが、最近フレットレスベースのしっとりした音に完全に魅せられてしまっているので(笑)あっさり変えてしまいました。曲全体のバランスを考えても今回の版ではフレットレスの方が良いと思っています。
ちなみにフレットレスベースの音を気に入ったというマニアックな方はMusicページの「雪降る峡谷」も是非どうぞ(笑)。

07 静寂の夕暮れ

早いものでもう夕暮れです。旅先から帰る電車の中で見る夕暮れでもいいでしょうし、家の窓から差し込む夕陽でもいいと思います。関東に来て思うのは、とにかく夕陽が綺麗なんですよね。綺麗と言うか、色が濃いというか、深いというか。つくばの広大な景色の中の夕陽も、東京の電車の中から見るビル間の夕陽も、同じ力を持って心の奥底に迫ってきます。そんなとき自分の中では全ての環境音がフェードアウトして、無音になるような感覚があります。その感覚を表した曲ということで「静寂の夕暮れ」です。

「からの花瓶」の直後に書いた曲で、しっとりした曲に慣れたおかげか複雑な音型にも関わらずかなりスムーズに出てきた曲です。緊張せずに作れたというか、弾いていても気持ち良い曲に仕上がったという感があります。そして夕暮れというより朝っぽいという意見もあります(笑)。

08 シラノハ

静かなピアノ曲。アルバムの核となるモチーフです。今回の帯裏楽譜はこの曲の出だし(下の譜面参照)ですが、デザイナーG君が「インスピレーション沸いたので是非!」と言うので任せてみたところ、葉っぱのレリーフを型どった何とも素敵な絵譜面を作ってくれました。こういうのをさっと作れてしまう想像力とデザイン力は凄いなぁとつくづく思います…そう言うと多くの場合「曲を作れるのも凄いと思います」という応酬になるんですけど。

シラノハは…落ち葉ということになってます。自分の中でもはっきりしないところがあるんですけど…雪の上に落ちた葉っぱから着想を得たために「白の葉」という名前になって、もっと広く落ち葉全体のイメージに敷衍したというところでしょうか。今回のジャケットはこのシラノハのイメージをG君なりに解釈して作ってもらったものです。初めて見せてもらったときは文字通り「シラノハ」のイメージが画になって出てきたので興奮したものです(ちなみに花とスプリングの部分は「からの花瓶」から着想を得たのだとか)。
落ち葉から想起する言葉ははかなさ、悲しさ…しかし芯の通った強さをも備えていると思います。この曲が明るい曲調なのはそういう強さのイメージを込めたためです。でもやっぱり自分の中では悲しい曲だなぁと思ってしまいます。

09 クノハ

「シラノハ」とは対照的な激しい性格のピアノ曲。今回のアルバムの一連のピアノ曲の中では一番「Solid Work」辺りの血を引いた曲だと思います。技巧的な面もありますが、叙情的というか、情熱的な面が強いこの曲の方が気に入っている節があるかもしれません。コンサートで弾くにあたって「シラノハ」と対になる動きのある曲が欲しくて書きました。葉っぱをモチーフに曲と書くなら紅葉は外せないだろうということで…ストレートに「紅の葉」をイメージした曲ということになります。
イントロから最後まで時折現れる「タタッ・タタッ」というリズムは、フォルクローレ・サークルと共演したときに演奏した「Sayera」という曲(YouTube動画)に使われていたリズム(「Saya」というそうです)から取りました。この曲を占める民族的な色合いはそういうところに由来していて、同じようなアプローチで書いた「Les fetes」も曲調の面で共通するところがあると思います。この曲の場合は途中で何故か軽くスウィングのリズムが入ってたりもするんですが…こちらは言わずもがなカプースチンの影響です。今思うと何という滅茶苦茶なスタイルの曲でしょうか(笑)。

曲としてはコーラスを繰り返しながら盛り上がっていき、一瞬熱が引いて「シラノハ」のサビに基づいた静かな部分を迎えた後、転調を重ねて最後まで一気に突っ切ります。今回のピアノ曲の中では最難曲だったので、レコーディングのテイク数も一番多かったように思います。

10 光の空中散歩

ここから夜の曲になります。「光の空中散歩」というタイトルには原風景があって、北海道に居たときしばしば訪れていたトマムの「スカイウォーク」という空中回廊が元になっています(こちらに写真を見つけました)。森の上に張り巡らされた回廊の上を柔らかい光に包まれて歩くのが好きだったので、いつかこのタイトルで曲を作りたいと思っていたのです。思えばもう十年近く訪れていないような…機会を見つけてまた行ってみたいですね。
スカイウォークに端を発したイメージは、人工建造物の光が空に浮かんでいるという意味で都市の放つ光へと拡大していきました。東京に来てから新宿などの高層ビル街に段々と光が灯っていくのを見るのを好きになったんですが、これもスカイウォークに対して抱いた感情と同じ発端だったのではないかと理解しています。空に光が浮かぶという幻想的な風景には、大自然の中でも都会の中でも共通して人を惹き付ける力があるのでしょう。そしてビルの光は空に帰って、夜明けが生まれる…この辺りのイメージはいつか映像作品にして観てみたい気もしています。
前置きが長くなりましたが、この曲はとにかく「浮遊感」を出すことに努めました。ハープを中心に金属系の音を多く使って、弦が低部を支えて、中間部ではチェロが叙情的なメロディを歌って…そこはかとなく「浮遊感」が出せたというか、自分のイメージする「光の空中散歩」像を上手く描けたように思います。この曲もミニCD「Les fetes」版からは改良を加えていて、全体のミックスし直し、左右に散りばめたシンセパーカッションの山彦数の調整、グランドピアノへの差し替えなどを行っています。曲の終わりでグランドピアノの低い一音がズーンと鳴って、倍音がクワーンと残るのが本当に好きです…これがやりたくてグランドピアノ録音を使ったようなものです(笑)。

11 吹雪の夜のカリヨン

一日の終わりの楽曲です。実際夜0時にカリヨンが鳴り響いたら大変なので、これも想像上の世界の話ということになります。西洋的な街の真ん中にある教会から鳴り響いてくるカリヨンのイメージ、そして吹雪。かなりはっきりした映像が浮かんでいます。元々北海道にいるときから吹雪にインスピレーションをもらうことは多くて…音もなく降りしきる雪というのは自分の中で大きな原体験のような気がしています。そんな力強い光景の中、最後はカリヨンと交差しながら昇華するように曲(一日)が終わりを告げていきます。
この曲は自分の中で久しぶりにエレクトリック・ギターが強くイメージを結んだ曲でした。これも生演奏を考えたのですが結局今の形に落ち着きました。吹雪の力強さを表したリード・ギターもいいのですが、最後のディレイ(山彦)ギターも独特の切なさがあって気に入っています。再ミックスに当たって一番変更したのがカリヨンで、曲中で目立ちすぎないように後ろに持って行ったり、最後は表に出てきつつも残響を増やして存在感を出したり…といった調整を加えました。

12 誰がための歌

カリヨンからそのままつながります。一度こういうシームレスなつながりをやってみたかったのです。もう一日は終わって、夢の中に居るようなアルバムの中でも異質な雰囲気の曲となっています(この曲のみシンセサイザーを使っています)。曲作りに悩んでいたときにふっとサビのメロディが降りてきたので、書き溜めていたスケッチの中から一番しっくり来るメロを選んで一気に原型を作りました。こういった歌モノ的な曲は長らく作っていなかったのですが、最近のポップスの受容を受けて自分なりにそういう曲(歌)を書いてみたいというのと、個人的に「サビで意外な調に転調する」ということにチャレンジしたかったのと…いろいろな挑戦が含まれています。
スケッチも上手く行き、構成や楽器編成も時間をかけて練り上げて…自分の中でも完全な曲となるはずだったのですが、今聴いてみるとやや完成度が低くなってしまった感があります。それまでの過程が完璧だったので、アルバム末期でアレンジに時間をかけられなかったことが全ての原因でしょう。今回のアルバムで唯一失敗点を上げるとしたらこの点を挙げざるを得ないのですが、逆にそれ以外は本当に上手く行ったなぁと思っています。完全に満足することが出来なかったのは…世の中そんなに甘くないということでしょう(笑)。
感極まったような間奏を経て全コーラスが終わった後は、リズムが少しずつ引いて消えるように曲を終えます。安息というのはこんな感じでいつの間にやら過ぎ去ってしまうものなんだと思いますが、同時に気が付くとそばにいる存在でもあるわけで…そのときはまた「A Morning」から始まる記録を紐解いていただければと思います。

終わりに

僕は今までサウンドトラックCDを多く聴いていたせいか、CDアルバムというものに関する素養があまりなく、前作「LIBERTY」のように単発の楽曲を集めたものは全体を通して聴きにくくなってしまった印象がありました。世の中にあるサウンドトラックCDが単に曲を並べただけでもまとまっているのは、それに付随する世界観があるからに尽きると思います。世界観を知らなければ、サウンドトラックCDは気に入った曲だけを楽しむための存在くらいにしかなり得ないのです。世界観がない純音楽である僕の音楽を同じ感覚で並べただけでは、全体としてまとまりのあるアルバムを作ることはできない…「LIBERTY」を落ち着いて聴けるようになった昨年の冬頃から、とにかくこのことが頭をもたげて仕方ありませんでした。
一念発起して「COMFORT」の製作を決めた今年の3月、「まとまりのあるアルバムを作ること」を絶対的な目標に据えました。本当にただこれだけに向かって、曲リストを何度も見つめ返しては「そこにあるべき音楽」を模索し続けました。作曲時期から二つ並んでいた「からの花瓶」「静寂の夕暮れ」が、やがて生まれた「一日の流れ」という概念に沿って自然と今の位置に収まり…壮大なオーケストラの序曲を新たに作って、途中では民族調のナンバーで盛り上げて…といった具合に、一ヶ月以内に今の曲順が固まりました。上記の通り完全な満足とは行きませんでしたが、少なくともアルバムのまとまりという点に関しては及第点を得られたかな、と…今になって認めることが出来ました。
僕の音楽には、定型がありません。映画のために作った曲でアルバムを作ればそれこそサウンドトラックになりますし、ピアノソロからサウンドスケープまでいろいろなものを発信することができます。最近は自分の音楽を確立することを意識しすぎていた感があるのですが、ただ既存の形式に迎合するのではなくて…せっかくいろいろ出来るのだから、作りたい世界観やコンセプトを第一にいろいろな可能性を考えることを忘れないようにしたいと思っています。これまでのアルバムワークで培ったことをふまえて、もう一段階レベルを上げて次回作に進んでいきますので…宜しければ今後ともご注目ください。