8月10日、カワイ札幌コンサートサロンChouChouにてピアノソロコンサートを行い、無事終演いたしました。ご協力いただきました皆さま、ご来場くださりました皆さま、ありがとうございました。
セットリスト
1. いだてんメインテーマ
2. Move
3. 未来(混声合唱組曲「風に鳴る笛」より)
4. Windy Night City Light
5. ミュージック(サカナクション)休憩
6. 時には昔の話を
7. 新曲
8. A Midnight in Sapporo
9. ふたりでひとつ〜メインテーマ(大河ドラマ「真田丸」より)
10. Invincible II
11.ボレロEncore. カルナヴァルの始まり
(場内BGM: daybreak)
さて、札幌という立地もさることながら、クラシカルスタイルのホールでのピアノソロ演奏会は大学卒業時以来の11年ぶり。当時と同じく、オリジナルだけでなく既存楽曲を多く含めた構成としました。
既存楽曲を取り上げること自体は、ライブハウスで演奏を始めるようになってからもしばらく続けていたのですが、近年はバンドスタイルでの演奏や、ソロでも映像付きで濃厚な世界観を追い求めていったことなどにより遠ざかっていました。
今回は故郷で行うこともあり、客層も幅広くなることが予想されましたので、原点(という表現が適切かはわかりませんが)に立ち返り、親しみやすい楽曲を多く取り上げることにしました。そして、自分にとって慣れ親しんだ曲であっても、もう一度原曲を良く聞き、曖昧だった記憶を再構築していく過程は、最近のリアル生放送での流れによるものだったと思います。
各曲について
1. いだてんメインテーマ
言わずと知れた本年のNHK大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺」より。タイムリーなのと、ファンファーレで始まるオープニングがコンサートの幕開けに相応しいので選曲しました。
難所は、途中の打楽器ソロ。この曲は全体を通してサンバの軽快なリズムが貫かれていますが、最後の盛り上がりにある打楽器ソロをいかに再現するかが悩みどころでした。最終的にパワーコードの組み合わせで再現しましたが、練習を重ねるたびに弾く楽しさが高じ、最終的にはソロの尺が少し長くなるほどでした。パワーコードだけだったのを、最後にドミナントに変えたのが良かったのかもしれません。
2. Move
本来は、Move IIを演奏する予定でしたが、オリジナルを新旧織り交ぜて選曲していく流れで、古い方のMoveを選びました。何度も弾いている曲ですが、ピアノソロでやるのは公には初めてだったでしょうか。この場合、曲の随所に現れる「決め」を、一層鋭角に、エッジに演奏しなくてはなりません。
3. 未来
中学時代、合唱コンクールで先輩学級が歌っていて強い印象を受けた楽曲を、どうしてもピアノで表現したく、そのために原曲のスコアを取り寄せました。しかし、自分の知る未来とはキーが違っていた。悩みましたが、中学時代の印象を再構築したかったので、せっかくスコアがあるのに、弾く調に浄書しなおしました。これだけでも手間でしたが、いざ練習をするとかなり難しい。合唱とピアノ伴奏で成り立つ曲をピアノ一本で再現するための取捨選択と、ピアノの特性を活かした難所の練習を重ね、何とか形にしました。先輩学級の未来はテンポが速めだったので、そこにも近づけたい、という思いが演奏をより難しくしました。聞く側の印象としては、そこまで難曲には聞こえないと思うのですが。
楽曲的には「青空の底には…」からの転調に次ぐ転調が美しく、曲が進むごとに折り重なっていく情感を感じてもらえるよう心がけました。
4. Windy Night City Light
本来はダンサブルなビートを伴う楽曲ですが、その他の楽器はクラシカルであるため、その成分を強調したピアノソロで演奏しました。一方で、四つ打ちのリズムもしっかりと残して。
5. ミュージック
ポップス枠はいろいろと候補がありましたが、札幌に所縁のあるサカナクションから選びました。
弾き慣れた曲ですが、だからこそ逆にコンサート用のアプローチに悩むことに。自分なりのドライな音でガンガンと弾き進んでいくのが、あるときあまり面白くないな、と感じてしまったのです。原曲がドライなところはペダルを使わないにしても、盛り上がる箇所ではペダルを多めに使うなど、普段の自分にはあまりない弾き方で仕上げました。大サビのsempre forte感は、前半のトリに相応しかったかと。
6. 時には昔の話を
年齢の高い客層が予想されたこと、そして自分のコンサートに足りない静かなバラード曲であること、から選曲。この曲の良さを出すには自分自身がもう少し年を経るべきかとも思いますが、もうそこまで若くないので取り上げてしまいました。
7. 新曲
M3-2019秋での新譜として考えている楽曲をいち早く披露。D minorで静かであり激しくもあり、というこの曲。実際はピアノソロではないと思いますが、10月に向けてプロダクションを進めていきます。
まだタイトルがないので、アンケートで曲名のアイディアを募りましたが、どれも成る程と感心させられるばかりで一つに定めることはいよいよ難しくなってきました。10月までには決めないといけません。
8. A Midnight in Sapporo
これも静かな曲枠。これこそ地域性からの選曲です。実家の前は交通量の多い道路。深夜には信号待ちの度にシンとした静寂が訪れます。その静寂と、ときどきの喧騒が入れ替わる楽曲です。今回の演奏では少しテンポが遅めだったかもしれません。プログラムで「睡眠導入剤のような曲」と紹介したのは冗談だったのですが、真に受けた祖母から「実にその通りで素晴らしかった」と繰り返し言われ、この場合喜んでよいのかどうか。
9. ふたりでひとつ〜メインテーマ
どちらかというと得意なのは前者なのですが、後者が難曲の分、結果的に完成度が高かったのはメインテーマだったかもしれません。ヴァイオリンの細かなフレーズや、和音をじゅうぶんに取れていなかったところを重点的に聞き取り直しました。どちらも既に動画にしてありますが、マイナーな曲なのに前者の方がよく再生されているのは文字通り演奏の完成度の差だと思います。今回演奏したものを動画にできていたら結果は真逆だったでしょう。
サントラでのメインテーマは無骨でそつない演奏ですが、今回のピアノソロ版はむしろコンサート版(動画)に近い熱を帯びていたように思います。
10. Invincible II
本来バンドスタイルの曲なわけですが、不思議とピアノソロで演奏した今回の完成度が一番高かったかもしれません。ヴァイオリン不在でも、曲の持つシンフォニックな部分が存分に出せたからでしょう。
当初は一作目のInvincibleを演奏する案もあったのですが、結果的にこちらで良かったように思います。今の自分を熱を持って表現できました。
11. ボレロ
説明不要のラヴェルのボレロです。大学卒業時のコンサートではやたらポップなアレンジにしてしまったので、今回は正統派なボレロでお届けしました。有名な楽曲の割には、低音の伴奏型でホールを埋め尽くしながらメロディーを歌っていく編曲は若干クセが強かったというか、意外に難しい聞こえになってしまったかもしれません。
オーケストラが折り重なるほどに、ピアノですべての和音を捉えるのが難しくなる。かなり練習を重ねたこともあり、終盤体力的に厳しくなる転調後のコーダまで一気に駆け抜けることができましたが、一方でまだまだ完成度を高める余地も感じます。
Encore. カルナヴァルの始まり
プログラムのコラムに掲載した北海道コンサドーレ札幌のチャント「カルナヴァルの始まり」をアンコールで取り上げました。本来は、自身の演奏動画にリアクションをいただいた札幌サポーターの方々を想定して選曲したのですが、演奏会が試合に丸かぶりになってしまった。そもそも慣れ親しんだ曲を取り上げるべきアンコールで、この曲を採用する意義は益々薄れてしまいましたが、せっかくの札幌コンサートですし、当初の案のままで行くことにしました。ユニフォームを着て再登場するのも直前にやめようと思ったのですが、周囲の声もあり結局決行。意外とウケがよく、独りよがりかとも思われたチョイスは、案外悪い結果でもありませんでした。
「たとえ敗れようと…」の歌詞に、弱小だった時代からチームを支え続けてきた先人の、万感の思いを感じます。
今後について
東京住まいとなった今札幌は遠く、毎年のように行うことはできませんが、勉強になり、かつ楽しめたコンサートでした。もちろん反省点もありますが、そこは今後の活動に還元していきたいと思います。目下は秋のM3での新曲、そろそろソロだけではなく幅を広げていくこと、そして既存楽曲を突き詰める方向性の、新しい展開を探ること。守りに入らず、いろいろと試し続けていきたいです。
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